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中国特許・商標の出願と保護に関する現状と動向について

近年、中国市場規模の継続的な成長、中国の知的財産保護環境の改善、人々の知的財産保護への意識の高まりに伴い、中国における特許・商標の出願件数と知的財産紛争は急速に増加している。企業は、大量の特許・商標出願件数がもたらす紛争リスクに対し、それらを見逃さず、積極的に対応する必要がある。また、安全な生産と運営活動を守るために、中国の知的財産保護の現状について理解を深め、知的財産制度を最大限に活用する必要がある。以下、知的財産レイアウト、知的財産紛争、法規制の推移の観点から、中国における特許・商標の出願と保護の現状及び動向について分析する。

第一部:知的財産レイアウトについて

特許・商標から中国の知的財産権のレイアウトは、次のような特徴を示している。

1. 特許・商標出願件数の急速な増加、巨大な規模

国家知識産権局が発表した特許・商標出願件数に関するデータは、中国での特許・商標出願件数が年々急速に増加していることを示している。特許出願は2010年に100万件を超え、2019年には438万件に達した。 商標出願も2010年に100万件を超え、2019年までに783万件を超えた。

これは中国が世界第2位の経済大国に成長し、商業活動が活発化し、ますます競争が熾烈になり、中国政府が知的財産権の保護を継続的に強化し、中国企業の知的財産保護の意識も高まっていることと関係がある。

したがって、外国企業は、中国での特許や商標を含む知的財産権のレイアウトをうまく機能させる必要があり、出願件数を増やしたり、品質に注意を払うだけでなく、レイアウト戦略を策定する必要がある。

弊事務所が代理した出願から見ると、中国における大手日系企業の特許・商標レイアウトの質と量は比較的高いが、中小企業のレイアウトは比較的弱い。大手日系企業は国際化が進んでおり、一般的に英語を使用しているため、比較的容易に提携する中国特許事務所を探すことができる。しかし、中小企業はコミュニケーション言語による制限や中国文化の理解不足などの問題があるため、中国における知的財産権のレイアウトと保護をより適切に実現するためには、日本の文化を理解し日本語能力を持った中国の弁理士との協力を模索する必要がある。

2. 中国出願人による特許数が極めて多く、その

ほとんどに外国ファミリー出願がない

発明特許の件数を例にとると、国家知識産権局が発表した『2019年中国知的財産の保護状況』では、2019年の発明特許の数は267.1万件であり、そのうち中国出願人による発明特許の件数(香港、マカオ、台湾を除く)は186.2万件であり70%近くを占めている。実用新案権と意匠権においては、中国出願人によるものがもっとも大きな割合を占めている。

中国特許件数の急速な増加、およびそれらのほとんどに外国ファミリー特許がないことを考慮すると、外国企業は中国で生産および運用を行う際に、特許のモニタリングと分析を強化して侵害リスクを防御する必要がある。特許モニタリング調査には技術開発、商業活動のさまざまな段階と目的に応じて、現在よく行われるものには新規性調査、無効データ調査、FTO調査、EoU調査、知的財産デューデリジェンス、および競合企業または特定技術の知的財産モニタリングがある。

弊事務所の経験では、優れた特許調査をするためには、豊富な特許調査の経験を持つだけでなく、クライアントと十分にコミュニケーションする能力も必要である。弊事務所の特許調査チームは、日系企業向けの業務の際には、日本語でコミュニケーションや報告を行い、日本語の調査報告を提供している。

3. 商標の抜け駆け出願・ブランドの便乗使用現像は依然として存在するが、さらに抑制されている

2019年4月に改正された「商標法」第4回改正では、第4条「使用を目的としていない悪意ある商標登録出願は却下しなければならない」との条項が追加された。この条項は、悪意ある抜け駆け商標登録の審査を強化し、審査段階で商標抜け駆け行為を抑制する。これまでのような登録後に救済する方法と比較して、登録前に悪意ある出願の審査を行うことは大きな制御力を発揮する。この条項の導入以降、大量の商標出願をした企業や個人は「ブラックリスト」に載り、商標出願者の出願行為がこの条項に属すると判断されると、その後の他の商標の登録出願も却下される。中国商標ネットの公開では、抜け駆け出願によって却下された事例は現在280件を超えている。

もちろん企業も商標をモニタリングし、抜け駆け出願の疑いがある場合は迅速に対処する必要がある。

第二部:知的財産紛争について

特許出願件数 (万件)

商標出願件数(万件)

特許民事訴訟一審事件(件)

商標民事訴訟一審事件(件)

1. 司法ルート

中国の知的財産保護の強化、知的財産の所有量増加、及び市場競争の激化に伴い、知的財産紛争の件数も増加している。

下の表は、2010年から2019年までの特許・商標の民事一審受理件数が増加の傾向にあることを示している。2019年には、20,000件を超える特許民事訴訟第一審案件があり、65,000件を超える商標民事訴訟第一審案件があった。

また、外国人を当事者とする侵害紛争の民事訴訟事件の動向から見て、以前は外国人の当事者が原告であることがほとんどであったが、近年では中国企業の技術レベルが大幅に向上し、知的財産保護の意識が高まったことにより、外国人の当事者が被告となる事件も珍しくなくなっている。

したがって、外国企業は、FTO調査、EoU調査、特許無効調査などの侵害リスクの防止と管理を強化し、積極的に対策を確立する必要がある。

2. 行政ルート

知的財産紛争は、司法ルート以外に、行政ルートを使用することもできる。つまり、侵害者の所在地または侵害が発生した場所の関連行政当局に対して処理を申請することができる。

国家知識産権局が発行した『2019年中国知的財産権の保護』では、2019年に法執行力がさらに強化され、行政執行の有効性が向上したことを示している。特許・商標を例にとると、年間を通じて特許侵害紛争に関する案件は約39,000件の行政裁決として処理され、前年比で13.7%増加し、7,300件を超える模倣品案件が摘発および処理された。また、商標侵害および模倣品に関する案件は31,900件が摘発および処理され、前年比2.24%増加した。

行政ルートは、司法ルートと比較して侵害行為の処理が速く効果的であり、結案まで迅速で、低コストであり、また特許権者の証拠提示責任の負担が軽いという利点がある。さらに、権利者は行政摘発で得た証拠(例えば、侵害被疑者の帳簿、侵害物品など)を今後の侵害訴訟で用いることができるという利点がある。

然し、行政ルートでは侵害賠償を直接取得できず、賠償金の調停は強制力を伴わない。また、行政ルートは最終的な裁定ではなく、司法審査を受けなければならないなどの欠点もある。

技術革新の急速な発展と電子商取引の活発な発展に伴い、近年市場競争は益々激しく変化しているため、企業、特にテンポの速い製品の事業者にとって、迅速な権利行使と市場保護は重要な課題である。

したがって、外国企業には行政ルートを最大限に活用し、地方知的財産の関連行政機関および公安機関などを利用して権利行使を速やかに行い、迅速かつ効果的な保護を達成することをお勧めする。

弊事務所が代表した某外国クライアントの商標権保護案件では、現地の警察を大量に出動させて多数の侵害拠点を一挙に取り締まり、広範囲に及ぶ継続的な侵害に大きな打撃を与え、模倣品産業チェーンを大幅に破壊し、これによりクライアントはクリーンな市場環境を獲得できた。

3. NPEが関与する特許訴訟

近年、中国の知的財産保護環境が改善され中国市場の影響力が巨大になるにつれ、ますます多くの国外NPE(非実施主体)が中国大陸市場に目を向け始め、現地のNPEも出現している。 Clarivate社がリリースした『アジア太平洋知的財産2020年次報告書』によると、NPEに関連する特許訴訟の件数は、特に2014年と2019年に大幅に増加している。案件の種類としては、特許無効案件が最も多く、次いで特許侵害訴訟があり、2016年以降、特許侵害訴訟の件数は大きく増加している。訴訟に関連する技術分野は主に電子通信技術であり、特に通信ネットワークの無効案件が最多となっている。これは業界のイノベーションが密集し、競争が激しく、この業界の中国における急速な発展と無関係ではない。

NPEからの挑戦に対して、テクノロジー企業についていえば、独自の技術革新と特許の貯蓄を強化することに加えて、リスクの高いNPEの特許を積極的にモニタリングすることや、リスクの高い特許に対して前もって匿名で無効化するなど、知的財産紛争の解決方法をうまく活用する必要がある。また、紛争が生じた際には、FRAND原則、独占禁止訴訟、非侵害確認訴訟、ライセンス比率確認訴訟などを十分に活用することができる。

第三部:法規制の変化について

近年、法治国家を包括的に推進する戦略的展開に伴い、経済社会開発のニーズと相まって、知的財産法制度を継続的に改善し、知的財産制度の構築を推進してきた。

1. 法規制の整備を推進、知的財産保護を強化

現在専利法第4回の改正が行われており、今回の専利法改正の主な変更点は、「証拠提出の困難さ」の問題を解決し、関連する証拠規則を改善すること、「権利行使のサイクルが長い」問題を解決し、行政調停協議の有効性を明確にすること、「賠償金の低さ」の問題を解決し、故意侵害への懲罰性制度を増設し、賠償倍数を5倍以下に規定すること、「コストが高く、効果が低い」という問題を解決するために、特許模倣に対する罰則を増やし、行政ルートを改善することが挙げられている。また部分意匠の追加、保護期間の延長、オープンライセンスなどの制度なども盛り込まれている。

2019年に新しく改正された商標法は、悪意ある商標権侵害に対する賠償倍数を改正前の3倍以下から5倍以下に引き上げ、商標の大量出願、抜け駆け登録などの行為を規制するいくつかの規定を導入した。

2. 知的財産行政管理機関、裁判機関の最適化

商標、特許の各々の管理と重複した法執行の問題を解決し、知的財産管理システムを改善するために、2018年の国務院の構造改革において、国家知識産権局(CNIPA)は再編成され、商標、特許、および原産地表示の登録及び行政裁決を統括し、また商標・特許等の執行業務についても指導することになった。

さらに、知的財産権の司法保護を強化し、技術革新のための法的環境を最適化するために、2014年以降、北京、上海、広州の知識産権裁判所が順次設置され、さらに20箇所の地方専門知識産権裁判所と3箇所のインターネット裁判所が設立された。また最高人民裁判所には知識産権法廷が設立され、技術に関する知的財産権紛争の二審をまとめて審理することになった。裁判機関の一連の改革を通じて、知的財産紛争事件の一元化、専門の管轄権が実現され、裁判基準の統一性、公平性、専門性に有利となる。


張永玉(チョウ エイギョク)

中国弁理士/最高裁指定訴訟代理人

Beijing East IP Ltd. パートナー、日本特許部部長。知的財産代理業に従事して16年。主に電気電子、機械分野の日本・中国特許出願の移行手続き業務、特許無効審判・訴訟、EOU分析、FTO分析業務を担当。

また、知的財産の国際交流にも積極的に参加し、近年、日本の大学、協会、法律事務所などで新世代技術分野の特許保護、中国知的財産制度、特許訴訟動向などについて講演を行った。

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