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工業意匠の保護

Hechanova & CoのEditha R Hechanova, Brenda P RiveraそしてChrissie Ann L Barredoが、フィリピンにおける意匠出願と保護に関するよくある質問について考察します

1. 意匠

「フィリピン知的財産権法」(以下、IP 法)またはその改訂版共和国法第8293条では、工業意匠を「線もしくは色と関連づけられるか否かを問わず、線もしくは色から成る構図または三次元の形状である。ただし、それら構図または形状は、工業製品もしくは手工芸品に特別の外観を与え、それら物品のための模様として機能することが可能なものでなければならない」と定義しています。

2. 意匠の登録要件

登録するには、工業意匠は新規または独創的でなければいけません。 下記は工業意匠として登録不適格です。

a) 特定の技術的な結果を得るための本質的に技術的もしくは機能的な考察によって決定づけられる工業意匠

b) 工業製品もしくは手工芸品とは別個に存在する表面装飾を配列しただけの工業意匠

c) 公の秩序、衛生もしくは善良の風俗に反する工業意匠

3. 工業意匠出願の対象としてのグラフィカル・ユーザー・インターフェース(GUI)

意匠の定義を満たし、登録要件に準拠していれば、GUIは工業意匠出願の対象となります。 GUIについては個別の規定はありません。

4. 意匠に対して実施される審査

フィリピン知的財産庁(IPOPHL)では意匠について迅速な登録手続きを採用しているため、正式な要件がすべて満たされ手数料が全額納付されれば、実態審査を受けずに登録されます。 ただし、出願人は、IPOPHLによる新規性についての決定の恩恵を受けるために、IPOPHLに実用新案技術評価書を請求できます。

5. 意匠において要求される新規性の程度

意匠が先行技術の一部を構成している場合、その意匠は新規であるとみなされません。書面または口頭による開示、実施、その他の方法で申請の出願日または優先日の前に世界のどこかで公衆の利用に供されている全てのものから構成されます。出願日または優先日に先立つ6ヶ月間に出願に含まれる情報を開示しても、新規性の欠如を理由に出願人を不利にすることはありません(IP法第119条)。通常の観察者が先行意匠と誤解する可能性があるような些細な点のみで先行意匠と異なる意匠は、新規とはみなされません(IRR規則1503)。

6. 意匠登録の手続き

非居住者の出願人は、IPOPHLで特許出願を行うために、フィリピンの弁護士または特許代理人を指名しなければなりません。

出願日の認定には、特許出願に以下の内容が含まれていなければなりません。(a) 出願人を特定する情報 (b) 工業意匠を具現化した物品の表現、またはその絵画的表現

IPOPHLでは以下の形式的手続きの要件を考慮して、出願書の方式審査を実施します。(a) 登録できない工業意匠に該当するもののひとつであること、(b) 意匠登録願書の内容、(c) 条約上の優先権を主張する場合は優先権書類、(d) 出願人が発明者でない場合は権限の証拠、(e) 該当する場合は譲渡証書、(f) 手数料の全額納付、(g) 出願人の署名、(h) 創作者の特定、(i) 説明文の内容および(j) 正式図面

第3項で述べたように、工業意匠には実質的な審査はありません。方式審査後に、意匠出願はIPOPHL電子公報に公告されます。意匠出願の公告から30日以内に、当該意匠の新規性に係る事項を含め工業意匠の登録性に関して不利な情報を、関連先行技術を引用して書面により提示することができます。かかる意匠出願の登録性を判断する場合に、かかる見解は考慮されます。

出願が登録性の正式な要件を全て満たしていて、IPOPHLが30日間の公告期間の失効後に不利な情報を受領しなかった場合、IPOPHLは工業意匠の登録を認めます。

7. 意匠出願での図面に対する特別な要件

意匠の図面においては特別な要件があります。図面は実用新案と工業意匠の図面のために規制で規定されている共通規則に加えて、工業意匠の図面は、物品の外観を完全に開示するために十分な数の図面を具備している必要があります。必要に応じて、特徴や輪郭を示すために、図面上に表面の陰影をつけます。図面の代わりに意匠の写真が提出される場合もあります。色彩が工業意匠の重要な特徴である場合には、その色彩を図面に再現するか、そのような色を使用した物品の部分を指定した上で、色彩の陳述を作成します。インクによる製図の代わりに、コンピュータ製図(CAD)等による意匠の図形表示が受理される場合があります。

8. 出願における複数の意匠

はい、ひとつの出願が複数の工業意匠の体現から構成されている場合があります。複数の物品は、単一の意匠概念に包含されて実質的に類似する顕著な意匠の特徴を有している必要があります。これらは国際分類の同一のサブクラスまたは物品の同一のセットまたは組み合わせに関連するものでなくてはいけません。

通例、一組として販売または使用されている「物品のセット」は、ひとつの出願の対象とすることができますが、各物品に同一の意匠または実質的に類似する意匠が含まれることを条件とします。複数の物品がひとつの物品のセットとして使用されている場合、物品のセットが揃って全体を構成するものであることを条件として、そのセットの意匠は意匠として保護されます。

9. 意匠保護の有効期間

工業意匠の登録は出願申請日から5年間有効で、更新手数料を納付することにより、各期間を5年として連続して2期間、合計15年間まで更新できます。 登録期間満了の12ヶ月前までに更新手数料を納付することにより、意匠登録を更新できます。満了後も割増料を納付することにより、6ヶ月の猶予期間が与えられます。

10. 意匠登録の取消方法取消の理由

IPOPHLの法務局(BLA)に対して、以下のいずれかの理由で工業意匠を取り消す請願書を提出できます。(a) 意匠の内容がIP法の規定により登録することができないものであること、 (b) 内容が新規でないこと、または (c) 意匠の内容が当初の出願の範囲を超えること

また、意匠登録の無効は、行政訴訟としてIPOPHLに、民事訴訟として地方裁判所に提起される侵害訴訟の抗弁または反訴として提起できます。

11. 意匠侵害への対応方法

意匠侵害の判断において、IPOPHLと裁判所は「通常の観察者のテスト」を適用します。このテストでは、購入者が通常持つ「観察力」を発揮する「通常の注意力を持つ観察者」が侵害の有無を判断します。これは、該当商品の「主な購入者」は、専門家ではなく、通常の観察者のような人たちだからです。

意匠登録者またはその利益継承者のみが、損害賠償および差止命令を得るために、侵害を理由とする民事訴訟または行政訴訟を起こすことができます。工業意匠登録の侵害とは、登録意匠の作成、使用、販売の申し出、販売、輸入、または所有者の同意なしに登録意匠を使用することです。

工業意匠の侵害を積極的に誘発するか、登録された意匠の侵害のために特に使われるものであり、かつ実質的に侵害しない使用には適さないものであることを知りながら登録された製品の部品を侵害者に提供する人は寄与侵害者として侵害者と共に、および個別に法律上の責任を負います。

侵害訴訟の提起から4年以上前に行われた侵害行為については、損害賠償を請求することはできません。 裁判所は、侵害に使用された材料や道具を含む侵害品の廃棄を無償で命じることができます。違反を繰り返した場合は刑事罰が適用され、罰金と懲役が科せられます。

12. 工業意匠に関する最近の判決

a. Yatai International社対パナソニック電工株式会社とパナソニック・フィリピン社(審判番号:10-2018-0003)2020年12月14日判決

2009年、パナソニックは、Yatai社のOMNIブランドのスイッチ、特にスイッチモデルWWS 213-PKの外観が、パナソニックの工業意匠「シーソースイッチ」(登録番号3-1997-12873)に類似しているとして、工業意匠侵害と損害賠償を求めてYatai社を提訴しました。 抗弁として、Yatai社はOMNI WWS-213およびWWS-213-PKスイッチはYataiの社長のために発行された工業意匠登録第3 2004 000767号によって保護されていて、パナソニックの工業意匠登録を侵害していないと主張しました。

BLA(フィリピン知的財産庁法務局)局長は、YataiのOMNIスイッチがパナソニックの工業意匠と「本質的に同じ外観」であると判断し、パナソニックを支持する判決を下しました。局長は、パナソニックの工業意匠登録第3-1997-12873号に実質的に類似するこれらのOMNIスイッチをYataiがパナソニックの同意と許可を得ずに配布および販売した行為は、特許侵害に該当し、意匠登録第3 2004 000767号は新規性を欠くとしました。また、局長はYatai社に対し、妥当な金額の損害賠償、弁護士費用および訴訟費用の支払いを命じました。 控訴審では、特許庁長官室は2020年12月14日に出された決定でBLA局長の決定を支持しましたが、弁護士費用の支払について修正しました。 Yatai社は長官室の判定を不服として、現在係争中です。

b. Alwin T. Go対「KeyLargo Car Accessories Center」の名義と様式で事業を運営するKPI Manufacturing, Inc.(審判番号:14-2017-0001/題名:自動車マット)2019年12月19日判決。

KPI Manufacturing, Inc. (以下「KPI」)は、Alwin T. Go(以下「Go」)が所有する

自動車マットは先行技術の一部を構成しているため新規性がなく、Goは工業意匠登録の対象となっている自動車マットの意匠の本来の図案家ではないと主張し、当該意匠に関する工業意匠登録番号3-2014-000155の取消を申請しました。KPI社は、2012年以降、あるいはGoが2014年に工業意匠権を出願する以前から、同様の意匠の自動車マットの輸入や販売を手がけていたと申し立てました。抗弁として、Goは自社がこの自動車マットの本来の意匠図案家であり、特殊なコンピュータ・プログラムを使って当該製品を作成したと主張しました。 BLA(知的財産庁法務局)裁定係官は当該工業意匠は先行技術によって予測されていないと判断し、自動車マットの工業意匠登録を取り消す申立てを却下しました。上訴では、BLA局長はKPIがGo社の工業意匠の新規性を否定するのに十分な証拠を提出したと判断し、裁定係官の判決を取り消し、KPIの取消申請を認めました。 上訴では、長官室は工業意匠自動車マット登録番号3-2014-000155の取り消しを命じたBLA局長の決定を支持しました。

13. フィリピンの意匠法が規定されている法律

a. フィリピン知的財産権法(改訂版共和国法案第8293号)及び意匠施行規則、

b. 特許、実用新案及び意匠に関する改正施行規則(2011年4月20日)

c. A.M. No. 10-3-10-SCまたは2020年知的財産権事件手続き規則(IPR規則)(2020年11月16日施行)

d. 民事訴訟における捜査および差押えに関する規則A.M. No. 02-1-06 SC (2002年2月15日)

14. 意匠に関する上程中の新しい法案

現在、第18回会議では、IPコードの改定案が審議されています。 意匠については、登録の責任と権限を商標局に移転する案があります。ただし、意匠に影響を与える要件、規則、保護期間、および救済措置については変更がありません。

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Editha R. Hechanovaは、HECHANOVAグループの知的財産権関連業務を担当しています。HECHANOVAグループは、商標や特許の出願、著作権、調査などの知的財産に関するコンサルティングに従事するHechanova & Co., Inc.から構成されていて、彼女は同社の代表取締役社長兼CEOを務めています。訴訟関連の知的財産業務は、執行、訴訟、ADR、ライセンス、企業法務、移民法、税務などを専門とするHechanova Bugay Vilchez & Andaya-Racadio法律事務所が担当しています。 彼女はザ・イースト大学で会計学を専攻し、経営学の学位を優秀な成績で取得し、公認会計士の資格を持っています。現在、PAQE(Patent Agent Qualifying Examination:特許代理人資格試験)に合格した専門家の団体であるAPPIの会長を務めています。また、2002年から2021年まで、『AsiaLaw Magazine』誌でフィリピンの知的財産法における一流弁護士に、2012年から2021年まで「Who’s Who Legal Trademarks」で「MIP IP Star」に選出されている他、『Asia Business Law Journal』誌では2018年から2020年まで「弁護士トップ100人」のひとりとして紹介されています。

Brenda P. RiveraはHechanova & Co.社の特許担当副社長として、様々な技術分野の特許出願チームを指揮しています。 このグループは、Freedom to Operation調査を含む特許調査、特許申請書の作成、および特許関連の調査に従事しています。 IPOPHLによると、Hechanova & Co社2010年から2020年にかけて、特許出願者および商標出願者で第1位となっています。Hechanovaグループは、2020年Asia IP Awardsで「Philippines Patent Firm of the Year」に選ばれました。 Breandaはザ・イースト大学とアジア太平洋大学で経済学を専攻しました。また、米国ニュージャージー州にあるBusiness Development AcademyのCPVA(Certified Patent Valuation Analyst:認定特許評価アナリスト)の資格を持っています。 彼女は特許出願業務において15年以上の経験があります。

Chrissie Ann L. Barredoは、Hechanova Bugay Vilchez & Andaya-Racadioのジュニアパートナーです。フィリピン大学では法学士号を、アテネオ・デ・マニラ大学では経営情報システム専攻の理学士号を取得しています。 特許、商標、意匠の侵害や知的財産権の侵害、その他IPOPHLの前に通常の裁判所と控訴裁判所に提出されるIPR関連の訴訟など、知的財産権の分野で15年以上の豊富な経験があります。 彼女は、特許代理人資格試験(PAQE)に合格した公認特許代理人で、特許・知財実務家の国際組織であるFICPI(Federation des Conseils en Propriete Intellectuelle:知的財産弁護士連盟)が実施したSEAD(South East Asia Patent Drafting:東南アジア特許明細書作成)講座の修了生でもあります。

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